モバイルバッテリーをごみに混ぜると?火災と復旧費の実例

コラム

モバイルバッテリーを燃えないごみ・燃やすごみに混ぜると、ごみ収集車や処理施設で火災につながることがあります。電池の混入が原因と推察される火災では、施設が年単位で止まり、復旧に多額の費用がかかった例もあります。

「燃えないごみ」という名前でも、モバイルバッテリーを混ぜてよいわけではありません。環境省の調査では、ごみ処理中の発火・発煙が起きた品目でいちばん多いのがモバイルバッテリーです。

燃えないごみでも、処理中の衝撃で発火する

分別されずに出されたモバイルバッテリーは、ごみ処理の途中で発火するおそれがあります。環境省は、混入した電池に施設の破砕機などで衝撃が加わり、発火するケースが多いと考えています。

環境省の令和7年度実績の調査では、事故の発生場所で最も多かったのは、破砕・選別・圧縮などをする再資源化施設でした。保管場所も含まれています。ごみ区分では不燃ごみが最も多く、可燃ごみ、粗大ごみが続きました。

つまり、燃やすごみに混ぜなければ済む話ではありません。燃えないごみとして出しても、その後の処理で電池に衝撃が加わることが、発火の原因になるとみられています。

同じ調査で、事故が発生した品目はモバイルバッテリーが最多で、次いで加熱式たばこでした。環境省は、小型で安いもの、表面がプラスチックのものが多い傾向とみています。小さいことや安いことは、ほかのごみに混ぜてよい理由にはなりません。

施設火災で起きた長期休止と多額の費用

電池の混入が原因と推察・推定される火災では、処理設備の長期休止や、億単位の復旧費用が生じています。ただし、以下の事例はすべてモバイルバッテリーが原因と確定したものではなく、原因の扱いも施設ごとに異なります。

施設 いつ 何が起きたか 費用 出どころ
中之島信条クリーンセンター(新潟県長岡市) 2024年4月19日 不燃・粗大ごみの処理を休止。燃やさないごみに混ざったリチウムイオン電池が原因と推察。2025年7月1日に再開し、休止は約1年2か月。 長岡市によると復旧経費は約12億円。市有物件災害共済で対応。 長岡市
リサイクルプラザ藤沢(神奈川県藤沢市) 2025年9月4日 大型可燃ごみの受入ヤードで出火。市は混入した電池内蔵製品からの出火と推定。電気設備が広く焼け、全設備が電源を喪失。けが人はなし。 藤沢市によると、設備復旧、市外搬出・処理、仮置場の運営に、これまでに約31.65億円。 藤沢市
常総環境センター(茨城県守谷市) 2024年12月9日 資源化施設で火災。守谷市によると翌日午前10時11分に鎮火し、施設の処理能力が低下。市は原因と考えられるものにリチウムイオン電池を挙げている。 — 守谷市
クリーンおしま(北海道北斗市) 2026年4月29日 燃やせるごみの受け入れを当面中止。北海道文化放送の報道によると、ごみピットで出火し鎮火まで6日。電池が発火した可能性があると広域連合はみているが、原因は未確定。 北海道文化放送の報道によると、輸送・委託料と復旧工事費は計約127億円の見込み。復旧には2年ほどかかる見通し。 北斗市・北海道文化放送(2026年11月7日報道)

藤沢市の例では、設備ごとに処理の再開時期が分かれました。市によると、不燃ごみは2026年2月9日、資源物は同年3月2日、市民の持ち込み受け入れは同年5月1日に再開しています。大型可燃ごみの設備と建物は、同年9月24日時点の発表で、同年12月ごろの復旧予定とされました。

施設の火が消えても、ごみ処理がすぐ元どおりになるとは限りません。電気設備や建物まで被害を受けた藤沢市の例では、処理や受け入れの再開まで月単位の時間がかかっています。

ごみ処理施設の火災で、施設が止まった期間と費用。藤沢市約31.65億円、長岡市約12億円、クリーンおしまは報道で約127億円の見込み

復旧費だけでなく、代わりの処理にもお金がかかる

施設火災の費用は、焼けた設備を直す費用だけではありません。施設が使えない間、ごみをほかの地域へ運び、処理を委託したり、一時的に置く場所を運営したりする費用も生じます。

藤沢市によると、先ほどの費用の内訳は、処理設備の復旧が約23.4億円、市外への搬出・処理と仮置場の運営が約8.25億円です。設備の修理とは別に、日々のごみ処理を続けるための支出が発生しています。

全国の被害額については、経済産業省の2025年8月の資料が、環境省の推計を紹介しています。リチウム蓄電池が原因の廃棄物処理施設などの火災事故による被害総額は、令和3年度で約96億円でした。この額には、施設が止まっている間の、ほかの自治体への処理委託費も含まれています。

住民の負担をめぐる議論が起きたのが、クリーンおしまの火災です。北海道文化放送の報道によると、七飯町の負担は約13億円の見込みとされています。

七飯町は、復旧や代わりの処理にかかる費用の増加などを背景に、ごみ処理手数料の有料化を検討しました。町によると、説明会では「火災に伴う追加費用を住民が負担するのではないか」という疑問が出ています。ただし、町は2026年11月1日に検討案をいったん白紙に戻し、ゼロベースで見直すと発表しています。火災を理由にした負担増が、その案のまま決まったわけではありません。

全国の事故件数からも「1個くらい」とは考えにくい

モバイルバッテリーなどの混入による事故は、一部の施設だけの問題ではありません。環境省と消防庁の調査には、全国のごみ処理で繰り返し起きている状況が表れています。

環境省の調査では、全国1,741市町村が回答した令和7年度の実績で、リチウムイオン電池などが原因と疑われる火災事故などは39,282件でした。発煙・発火も含む件数で、このうち職員か消防隊が消火したものは9,456件です。

一方、総務省消防庁の調べでは、廃棄されたリチウムイオン電池などを回収中のごみ収集車と、ごみ処理関連施設から出火した火災は、令和4年の161件から令和7年の213件へ増えています。こちらは消防機関が火災として扱った件数で、環境省の調査とは集計対象が異なります。

これらは、捨てた電池のうち何個が燃えるかを示す数字ではありません。「1個なら大丈夫」という根拠には使えず、反対に、すべての電池が必ず発火するという意味でもありません。

捨てるときは自治体別の回収方法へ

使い終わったモバイルバッテリーは、ほかのごみに混ぜず、自治体や回収先が案内する方法で出します。出し方は自治体ごとに違い、集積所に出せる地域もあれば、拠点への持ち込みや電話による訪問回収が必要な地域もあります。

地域による違いは、モバイルバッテリーの捨て方は自治体でここまで違う(27自治体)にまとめています。自分の地域の案内を探す場合は、自治体別の捨て方をご覧ください。

家電量販店などの回収協力店(JBRC)も回収先の選択肢です。また、消費者庁によると、2026年4月1日からモバイルバッテリーはメーカーなどによる自主回収・リサイクルの対象製品になっています。対応はメーカーによって異なります。

よくある質問

モバイルバッテリーは燃えないごみに入れてもいいですか?

ほかの燃えないごみに混ぜて出すことは避け、自治体が案内する回収方法に従ってください。環境省の調査では、電池などが原因と疑われる事故は、ごみ区分では不燃ごみが最も多くなっています。

掲載された火災は、すべてモバイルバッテリーが原因ですか?

すべてがモバイルバッテリーによる火災と確定したわけではありません。リチウムイオン電池が原因と推察される事例や、電池内蔵製品からの出火と推定される事例、原因が確定していない事例を区別して掲載しています。

施設火災の費用は、そのまま住民に請求されるのですか?

掲載事例から、費用がそのまま住民に請求されるとはいえません。共済で対応した例もあり、七飯町では費用増加などを背景に手数料の有料化が検討されましたが、検討案はいったん白紙に戻されています。